10mグラスファイバーロッドで使用する 6m用コリニアアンテナの製作            JQ1QNV

 移動や自宅ベランダで使用するために、10mグラスファイバーロッドを使った6m用ワイヤーアンテナを作りました。本当は指向性のあるアンテナが欲しいところですが、設営が容易、場所を取らない、自作も簡単などを考慮すると、垂直一本の形となりますね。今回作製したのは垂直エレメントの2段コリニアアンテナです。主要寸法と全体の構成を図1に示します。


        図1 6m用コリニアアンテナ 主要寸法と構成

1.アンテナの設計

 今回は、2段コリニアとしました。MMANAの解析結果だと、利得は4dBiとなります(2-1,図2-2)
ダイポールと比較すると長さは2倍なのですが+2dBなので、長さほど利得は高くならず効率が良いとはいえません。ただ、八木の2本スタックでも1本分の利得+3dBの ようですので、それを考えると、まぁ、仕方ないですか。これだと、ロッドの先端に垂直のダイポールと言うのも簡単で十分ありなのですが、「送電線をロッド に長く這わせることになるので、どうせ這わせるならアンテナエレメントにしたほうがいいだろう」、「コリニアにすると、アンテナ全長が6mなので、10mのポールであれば丁度良い」という理由で今回の構成に決めました。また、個人的興味として、「位相反転のスタブの動作が面白いので使ってみたい」というのも理由の一つにあります。
 当初、送電線の引き回しや高くなるアンテナインピーダンスを考慮して、今回計画したアンテナの下側のエレメントを水平にした似非ラジアルのL字配置を検討してみましたが、利得がよくないのでやめました。このアンテナは水平の方向だけに電波を放射してほしいのですが、L字の場合、グランドのつもりで水平に伸ばした似非ラジアルがエレメントになってしまって、垂直の方向(意図しない方向)も放射されるので、その分、水平方向の利得が下がります。これではコリニアにする意味がありません。解ってみればあたりまえですが、結果が出るまで気づきませんでした。また、「L字 にしろ、ラジアルにしろ、メインのロッドに対して直角あるいは放射状にエレメントを出すような工作をしないといけない」、「インピーダンスが不整合で反射 の状態だったとしても、何十メートルも送電線を引き回すわけではないし、チューナーがあるじゃん。」という理由もあって、結局一直線状の配置にしました。 なお、今回送電線に使用したメガネフィーダですと特性インピーダンスは200Ωなので、アンテナ(176Ω)とフィーダの間では、まぁまぁの整合です。



     図2−1 2段コリニアアンテナのMMANA解析結果 (電流分布)


      (DPとの比較のため自由空間で解析を行っています。)
     図2−2 2段コリニアアンテナのMMANA解析結果 (ゲイン)

2.主な構成要素の製作

 主な構成要素は図1にあるように、アンテナエレメント、位相反転用スタブ、コモンモードチョークと送電線です。アンテナエレメントは被覆導線を図1の寸法になるように切りました。送電線は200Ωメガネフィーダで、13mくらいの長さです。その他の要素については以下説明します。

2.1 位相反転用スタブの作製

 3D-2V1/4λ(今回は95cm)*1)の長さに切り、一端をアンテナエレメントに接続し、他端は短絡させるというのが基本的な構造です。今回は1/4λの同軸ケーブルの両端に端子を取り付けました(3) 。一端はアンテナエレメントに接続するためですが、他端の端子はスタブ単体の周波数調整用に短絡線を接続するためのもので す。ただ、今回は結果的に丁度良い長さだったので、短絡線は最短のものになりました。今回、スタブは同軸を使いましたが、最初は「ちょん切る・繋ぐ」が楽 なリボンフィーダで作りました。ところが、外部の影響を受けやすく、いまいち不安定だったので、結局、外部の影響を受けにくい同軸で作ることにしました。
*1) 1/4λ× 6m × 0.63(短縮率、実測値)



    図3 位相反転用スタブ

2.2 コモンモードチョークの作製

 上下のアンテナエレメントへ平衡に給電する必要があるので、コモンモードチョーク(1)(バラン)が必要です。また、下のアンテナエレメントと送電線が近接するので、下側アンテナエレメントによって送電線に誘起される不平衡電流を抑えるために、アンテナの給電点から1/4λはなれた位置にもコモンモードチョーク(2)を設置します。


2.2.1 アンテナ給電部のコモンモードチョーク(コモンモードチョーク(1))

 以前作ったものを再利用しているので、詳しい設計データは残っていないのですが、要はフロートバランなので、トロイダルコアに対にした被覆線をバイファイラ巻きにしたものです。トロイダルコイルはFT-114-43を使用し、巻き数は6回です(4)



 図4 コモンモードチョーク(1)

2.2.2 送電線途中のコモンモードチョーク(コモンモードチョーク(2))

 トロイダルコアに送電線自体(200Ωメガネフィーダ)を巻きつけたもので、アンテナの給電部から、1/4λ(1.5m)離れたところに作ります。巻き数はリアクタンスが送電線のインピーダンスの60倍になるような巻き数(出典不明^^;)ということで、トロイダルコアFT-240-436回巻いて作りました(図5)。メガネフィーダは結構硬いし、重いですね。これなら同軸でも良かったかなぁと思います。でもまぁ、整合のことを考えたらメガネフィーダのほうが良いですね。後でいろいろ調べてみると、リアクタンスが3kΩと言っている教科書*2)がみつかったので、もしかしたら、巻き過ぎかもしれませんし、小さなコアで済んだかも。^^;
*2)
改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 山村英穂 著 CQ出版社 p501


 図5 コモンモードチョーク(2)

3. 組立・設営

 前述の位相反転用スタブとコモンモード チョークをそれぞれケースに収納します。ケースは食品を入れるタッパーを使いました。安価、種類豊富、落としても割れない、加工しやすいなどの利点がある ので最近の工作に使用するケースはタッパーが多いです。設営はロッドを伸ばしながら、位相反転用スタブ、コモンモードチョーク(1)、コモンモードチョーク(2)の順でロッドに取り付けます。各要素のロッドへの取り付けはマジックテープを使用します。またアンテナエレメントは適当な位置で紐を使ってロッドに括りつけます。ロッドの先端へのエレメントの取り付けは鉛筆やマジックのキャップを使うと簡単です(6)。アンテナの全景と各要素を取り付けた時の写真を図7に示します。



                 図6 ロッド先端へのエレメント取り付け


          図7 アンテナ全景(写真)

4. 特性の確認

 出来上がったアンテナのインピーダンスのを測って、解析の値と比較してみました。今回 作製したコリニアアンテナと、そのコリニアアンテナの位相反転スタブを取り外したダイポールアンテナをそれぞれ送電線に接続してインピーダンスを測定し、 送電線の補正を行ったところ、だいたいそれなりのインピーダンスになっていることがわかりました(8)



8 アンテナインピーダンスの測定結果と解析値の比較(スミスチャート)

5.運用

 自宅と、森林公園から稗田さんと交信ができました。お相手いただいてどうもありがとうございます。2012年610日にEスポが発生したとき、九州、沖縄、北海道、中国、韓国と交信できました。このアンテナは利得としてはダイポールより少しはマシな程度のものですので、この運用結果の裏を返せば、Eスポさえ発生すればダイポールでもそこそこ交信できるということになりますかね^^;。ただ、近くの局が遠いのです。もしかしたら6mの方は皆さん水平偏波なのでしょうか。青梅市移動の局が強かったのでアンテナの種類を聞いたら、垂直のGPとのことでした。ともあれ、アンテナとしてはそれなりに動作しているようです。このアンテナは10mのポールを持っている方であれば(おそらくそういう人はチューナも持っているはず)簡単に作れますし、設営も簡単です。コリニアがめんどくさければダイポールでもそこそこ行けるアンテナになると思いますので皆さんも試されてはいかがでしょう。

  運用実績
  期間: 201263日〜624
  場所:自宅(土浦市白鳥町)、土浦市森林公園  リグ:IC-7400(50W改造) 

  エリア  QSO
  1エリア  8
  2エリア  1
  6エリア  5  (そのうち沖縄1
  8エリア  6
  中国    1
  韓国    3

以上




Copyright (C) 2012.9 Kadowaki Isamu